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棲む
これは、俺が大学在学中に起こった話。
ある日、ゼミのT先輩から届いた一通のメール。
【ちょっと面白い物件を見つけてな。引っ越したから、遊びに来いよ】
先輩の誘いを断ると厄介なことになると思って、俺は友人のYと一緒に先輩の引越し先を訪ねてみることにした。
メールで住所を教えてもらってYと一緒に訪ねた先は、常に日陰でじめじめしているようなコーポだった。
教えられた部屋のチャイムを一回鳴らして、扉の前で待機する俺たち。
「この感じ、いかにも出そうだネェ」
そんな中Yが俺にニヤニヤしながら言う。
「出るって何が」
「何って、コレが」
そう言ってYは両手を胸の高さまで挙げて「うらめしや」のポーズをする。
Yは霊感が強いほうで、そう言う話には強い方だ。
「やめろって、俺、そういうの苦手なんだから」
「あぁ、ごめんごめん。でも、此処って……」
「だから、やーめーろ」
俺はそう言ってYを止めていると、
「おう……待たせたな」
扉から先輩の姿が現れた。
しかし、何処となく元気が無い。下瞼にもクマがくっきりと刻まれていた。
「先輩大丈夫ですか? 体調が悪いのなら俺たち帰りますけど」
「平気だ。入れ」
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