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 はじめに落ちた場所は、一面の草原だった。 「随分とまたさわやかな場所じゃねえか。……いい夢見やがって」  女を抱いたあとの男は、無意識のうちに大体こんな夢を見る。これに似た光景に出会ったのは一度や二度ではなかった。  俺はまず、左手の羅針盤を確認した。矢印はまっすぐ地面に向かって伸びている。 「自分でも忘れたい記憶、ってかよ……めんどくせぇ」  俺は周りのイメージを集め、自分の姿を小さなモグラに変えた。他人の夢の中では、訪問者はその場にありえないものには変身できない。状況を察知し、雰囲気を読み、ターゲットに自分をその姿に見えるように仕向けることを、閉ざし屋は「イメージを練る」とか「イメージを加工する」なんて呼ぶ。俺たちにとって夢は、潜在意識そのもの。歩き方を間違えれば抜け出せなくなることもある。夢の中だからといって、なんでも思い通りに行くわけではないのだ。     
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