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モグラになってまっすぐ土を掘り進みながら、土の中のイメージを探る。マンガチックな小型のドリルマシンになら、無理なくイメージを加工できた。真っ暗な地中を、黙々とドリルマシンが進む。掘り進みながら、俺は少しずつマシンの図体を大きくしていった。少しでも早く、距離を稼ぐためだ。
それでも10分以上は掘り進んだろうか。不意に目の前に光が現れて、ドリルマシンのコックピットでモグラの俺は一瞬焼かれた目を覆った。目の前の空間には、女の人形のようなものがいくつか転がっているようだ。別れた女か自分を振った相手か。普段は思い出したくない情報のひとつであることは間違いなかった。
羅針盤はまだ下を指している。ドリルマシンのまま、俺はさらに夢を掘り進めた。
いくつかの階層が、すぐに現れては消えた。血みどろの死体に斧を振り下ろす男の部屋、ピカソに似た抽象画がびっしりと植えられた畑、古い電話機の受話器部分だけがちぎれて落ちている道。なるべくイメージに介在しないようにしながら、俺は先を急いだ。おそらくはどの階層も、ターゲットの現在の性格を形成するのに必要な情報の断片なのだ。
異様に頭の大きなウサギが足の踏み場もないほど飛び回る街で、俺の羅針盤は垂直から水平に変わった。どうやらこの階層に、目指す情報は隠されているらしい。俺はドリルマシンから降り、周りと同じ巨頭のウサギとなって街を跳ね回ることにした。
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