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 街は、どこかの都市のようだった。ただし人間は一人もいない。アスファルトを埋め尽くしているのは、遺伝子操作でも受けたかのような不気味なウサギだけだ。羅針盤に従って跳ねていくと、あるビルの前までたどり着いた。  このビルの中に、消すべき情報が隠れている。入り口はガラス張りの自動扉だったが、内側からブルーのビニールシートで覆われて中を見ることはできない。研究者とかなんとかいう話だから、おそらくとんでもない発明だか発見だかをしちまったんだろう。自分でも、見つけたことを後悔しているのが見て取れる。この自動扉を完全に封鎖してしまえば、人類存亡の危機とやらは永遠に封じ込めることができるはずだった。 「さて、問題は方法だ」  俺は独り言をつぶやいて、ウサギの身には大きすぎる自動扉を見上げた。頭がでかすぎて、うまくバランスが取れない。     
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