7.帰る場所

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   冷凍庫を閉めて上を覗いた。 「あ!! シュークリーム!」 「今日は食うのやめとけ。あんみつ2つ食ったろ」 「だめだよ、賞味期限があるんだから。1つ? 蓮のは?」 「俺はいいよ。お前が食え」 「ありがとう!」  朝からずっと一緒だ。だから安定しているのか。病院での甘えも我ままも出てこない。 「明日だけどな、俺は仕事だ」  シュークリームをテーブルに置いてジェイが俯いた。 「……だ、いやだ、俺、1人置いてくの?」 「一緒だよ、ジェイ。俺と会社に行かないか?」 「会社に?」  上がった顔の目が見開いている。 「行っていいの!?」 「仕事が出来るならな。自信が無かったら休んでいいんだ。お前に任せるよ」 「行く!! みんなにも会いたい!」  シュークリームを掴んだから指の間からクリームが垂れた。 「おい! 垂らすな!」 「ごめんなさい!」  指の間を舐める間にまた垂れてくる。それを慌てて口に受けるから唇の周りがクリームで覆われた。 「蓮、べちゃべちゃになっちゃった」  ため息をついて濡らしたタオルを持ってきた。手を拭いてやる。頬を拭く。 (頬の傷が薄くなった……)  手の甲の傷もほとんど目立たない。けれど下腹部にはまだはっきり傷の痕が残っている。  もう薬は要らない。自然に消えるのを待つだけ。   
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