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久しぶりの出勤。いつもより30分早く起きて支度を始めた。順調な出だしだったのにネクタイでつまづいた。
「あれ?」
「どうした」
「これ、変」
まるで初めてネクタイを首に通したような、そんな結び方にジェイが鏡を見ながら途方に暮れていた。
蓮は手を出さなかった。
「ジェイ、鏡を見ないでやってみろ」
しばらく考えているから声をかけた。
「後2分で出るぞ」
慌ててネクタイを手早く締めた。
「あれ? え?」
「出来たろ? 今度は鏡を見て形を整えるんだ。出来たら見てやるから」
神妙な顔でそっと触っていく。蓮に向き直った。
「バッチリだ。合格」
ウィンクして親指を立てると飛びついてきたから、すんでの所で避けた。
「蓮!」
「ばか、時間だろ?」
時計を探すから蓮は自分の時計をツンツンと叩いた。あ! という顔で自分の手首を見る。
事件の時にジェイの腕時計は壊れていた。その時のものとは全く違うデザインを退院祝いだとプレゼントした。
「これ、カッコいい!」
「そうか? 良かった、それにして」
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