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隣のフロアから篠原という女の子が間違って郵便物が来ていると届けにきた。
「わ! ジェロームさんじゃないですか! もう具合いいんですか? みんな心配してたんですよ、男の人に駐車場で誘拐されてひどいケガしたって!」
早口で止める間も無かった。一瞬でジェイが固まる。三途川が篠原を廊下に引っ張り出した。
「自分とこに戻んなさい」
「ジェロームさん、大丈夫なんですか? 入院してたんでしょ?」
「今ウチは忙しいの。分かった?」
「ジェローム?」
尾高が声をかけた。息子のことが脳裏を走る。
動かない、心がどこかに飛んでしまった。マズいことに蓮は池沢を連れて田中のところに行っていた。
「座って。誰か水持ってないか?」
けれどジェイは座らない。どうしていいか分からない…… 尾高の言葉に砂原が冷蔵庫に動いた。
「お茶なんですけど」
「ありがとう、砂原さん。ジェローム、これ飲むんだ」
口を開けたペットボトルを受け取って素直に飲んだ。
「大丈夫か?」
その質問が次の引き金になる。
「俺、ジョーグル飲みたい」
「ジェローム?」
「プリンも欲しい」
涙がポロッと落ちた。
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