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そこに花が戻ってきた。様子が違うことに気づく。
「何かあったの?」
小さな声で聞かれた千枝が呆然として答えた。
「隣の女の子が事件のこと……駐車場のことを直接ジェロームに聞いちゃって……みんなどうしていいか分からないの……」
「ジェローム、花だ。戻ってきたよ」
「花さん、どこ行ってたの?」
言葉が子どものようにたどたどしい。
「お前が教えてくれたろ? 受付で資料受け取ってきたんだ、ほら。ありがとうな」
「俺、座りたい」
「いいよ。自分の席なんだ、座れ。俺さ、来るときにジョーグルとプリン、買ってきたんだ。要るか?」
「ジョーグル!」
みんなただ黙って見て聞いていた。
「午前中、頑張ってくれたな。助かったよ。昼飯どうしようか」
ジョーグルを飲みながら真剣に考えている。少しして、ジェイがハッとした。
「俺……何か迷惑かけた?」
「何も。どうした? お前がいないと俺はやっぱりだめだってことが分かったよ」
「俺、仕事頑張る。だからここに置いてくれる? まだいてもいい?」
ジェイを抱きしめた。仕事だけなら大丈夫なのだ、仕事だけなら。ジェイの悲痛な言葉がみんなの心に刺さる。
花は喉の熱い塊を呑み込んだ。声が引っ繰り返りそうだ……
「いいよ。俺を助けてくれ。お前がいない間にいろいろ溜っちゃったんだ」
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