02

2/5
前へ
/77ページ
次へ
「へえ。そんなに?」 「はい。ただ自分勝手なプレイする傾向があって、俺以外組みたがるやついなくて」 「そういう相手と普通に組めてやっていけるってことは、津々賀君もすごいんだと思うよ。おれも今組んでる相手がそんな感じでね。……あ、今言ったこと、本人には秘密ね!?」  笑いながら言っていた堀井は、不意にハッとしたように辺りを見回す。今組んでいるという相手に聞かれやしないかと焦ったらしい。  それに「分かりました」と、唯一は笑った。 「けど、それなのにどうしてシングルスに?」  話の流れから考えれば、その質問が出てくるのは当然のことだった。  そのため唯一は、当時のことを思い出してモヤモヤしつつも、困ったように笑い、言う。 「……俺が、悪いんです。そのとき俺、人生初の彼女ができて浮かれてて。そのせいで練習が疎かになってたみたいで……」  なんでもない過去の話だと自分に言い聞かせながら、唯一は話す。  だがどうしても、無意識に当時のことを思い出してしまい、ズキリと胸が痛んだ。 「で、そのときの試合で負けて……ペアだったやつに『お前のせいで負けたんだ。オレはもうダブルスはこりごりだ』って、言われて」  親友だった彼とは、それきりだ。  唯一の話に、堀井は戸惑ったように眉尻を下げる。聞いてはいけないことを聞いてしまったと言いたげな、困ったような表情だった。
/77ページ

最初のコメントを投稿しよう!

196人が本棚に入れています
本棚に追加