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それに気付き、唯一は慌てて首を横に振る。
「もうそんなことしませんから。今の俺、すごく真面目です」
片腕を曲げて、唯一はおどけてみせる。
それと同時に、これ以上のことは言えないな、と思った。
向こうから絶交されたのは、それがきっかけだった。だが自分が悪いと思っていた唯一は、謝って、改心して、もう一度彼とペアに――親友に戻りたかった。戻ろうとした。
けれどそれは叶わなかった。
というのも、負けて文句を言われた上に、その彼女までそいつに盗られたからだ。
さすがにそれには納得できず、結果唯一からも、彼と縁を切った。その後彼は、中学三年になると同時に、引っ越していった。
「津々賀君は、シングルス希望?」
「はい。部長はダブルスなんですよね?」
「うん。後輩と組んでるんだ。さっきも言ったけど、ちょっと難しいやつでね。おれ以外、組めるやつがいなくて」
「へえ……」
「まあおれも、ついていくのが精いっぱいだったりするんだけど」
あはは、と乾いた笑いを漏らした堀井は、不意に片手を持ち上げた。
「ここだよ」
そう言って指を指すのは、フェンスに囲まれた二面のテニスコートだ。早くに来た体操服姿の部員達が、部活の準備を始めている。
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