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「津々賀君、今日は見学だけど、テニス部に入ってくれることになってるから。同じ二年生だし、日戸、色々教えてあげてほしい」
「は!?」
壮慈が、ぎょっとしたように唯一を見る。唯一も壮慈から顔を背けた。
そんな二人の態度に、堀井がきょとんとしたような顔をする。
「……あれ? あの、どうか……」
「嫌です」
どうかした? と続けようとした堀井の言葉を、きっぱりとした口調で壮慈が遮った。
「え!? 日戸!?」
「オレ、こいつの面倒看るなんざ死んでもごめんです。失礼します」
「え、ちょ……!?」
唯一が目の前にいるにも関わらず、壮慈はそう言うと、足早にコートへ戻って行った。
「ご、ごめん、津々賀君。なんかあいつ、機嫌悪いみたいで……」
おろおろと、堀井がフォローを入れる。
それに、唯一は自嘲気味に笑った。
「いいですよ。……俺だって、あいつに面倒看てもらわなくていいんで」
「え……」
吐き捨てるような唯一の言葉に、堀井が頬を引き攣らせる。
そんな堀井を横目で見ながら、唯一は自分を取り繕うことができなかった。
ただ、何食わぬ顔でテニス部に所属している壮慈の背中を、見つめているだけだった。
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