世界の理を超えて。

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藍がそう思ったその時だった。待合室の出入り口で警備員と見覚えのある少年が口論になっていた。 「う……そ」 藍はその少年を見ると自然とそう声に出してしまう。 「藍!」 普段はクールで素っ気ない態度を気取っていた拓磨が己の感情のまま藍の名前を呼んだ。 「拓磨!」 藍にはそれが嬉しかった。もう会えない、そう思った人にまた会えた。こんなに嬉しいものはなかった。 拓磨は警備員を振り払うと藍の元へ走り抱きしめた。 「拓磨……私、ずっと!」 藍には次の言葉が出てこなかった。言う台詞は決まっていた、だが高まり過ぎた感情が一時的に語彙力を無くしたのだ。 「あぁ、分かってる」 泣きじゃくりながらそう言う藍の頭を自分の胸に抑えるように拓磨は強く抱きしめる。 本当は一瞬だったのかもしれない、しかし彼女らは長い時間抱き合っていた────そんな気がした。 そして2人は警備員に引き剥がされると拓磨は別れ際に「来世でまた会おう!その時はずっと一緒にいよう!またアイツらと一緒にバカをやろう!」とそう叫ぶと外へ投げ出される。 「すみません、お2人を邪魔はしたくなかったのですが、コレも……規則なので」 警備員は申し訳なさそうにそう言うと藍は涙を流しながら顔を上げ、笑顔で「ううん、時間をくれてありがとう」とそう言った。 (拓磨……うん!約束だよ)
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