彼女は面倒くさがり

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「天鎖はどうしていた?」 「つい先ほどお目覚めに。わたくしの気配に気付かれたようで」 「!照姫の気配に気付いたのか」 照姫は普段から殆ど気配を感じない。 どころか、存在すら照姫から現れない限り察知出来ない。 そんな照姫に気付くとは、相当他人の気配に聡いのか? どうやら照姫自身も相当驚いているようだ。 天鎖はあまり人馴れしていない……というより警戒しているようだったから、気配を感じない照姫に身の回りの世話を任せることにしたが、どうやらその気遣いは意味のないものになってしまった。 天鎖からはなにも言われていないし、照姫は最古参の侍女でも腕が良いので、特に問題ないようだが。 まあいいか、と問題無しの判定を下していると、ふとまだ照姫が目の前に留まっていることに気がついた。 いつもなら用が済むと直ぐに居なくなっているのだが、今日は何やら物言いたげに見上げてくるので無言で先を促す。 「───蓮様。どうか姫君を……天鎖様を、宜しくお願い致します。姫君の心の拠り所となって差し上げて下さいませ」 「ああ……勿論だ」 その言葉を聞き、満足そうに頷くと、失礼しますと一礼してふっと気配が消え、意識しなければ認識出来なくなった。 照姫は家で働いているとはいえ、誰にも仕える気はないという意思を貫いている。 そんな照姫が自ら天鎖の侍女に名乗り上げ、それこそ初めから天鎖を姫君と呼び、尽くしていた。
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