6.心の場所

12/17
前へ
/93ページ
次へ
 ついでに軽く体と髪を洗ってからリビングに戻ると、アンリはもうすっかり目を覚ましていて、ベッドの上であぐらをかいて、スマートフォンをいじっていた。  ケイが戻ってきたことに気づいたアンリは、こっち、とケイをベッドのほうへ手招く。  ケイはアンリの横に腰を下ろした。 「すっきりした?」  わざと答えづらいことを聞かれている気がして、ケイは不満のためにむうっと口をとがらせた。 その様子を横目でみて、アンリがくすくす笑っている。 「じゃぁ、さっきの続き。ちゃんと考えるって言ったよね、」  言ったのではなく言わされたのだと、ケイは思って、不満の表情をそのままに、ベッドの上に足をのせて、体育座りをした。 「また髪乾かしてない、」  アンリはケイのうなじを触りながら、 「毎日会うならいいの?」  と訊いた。  ケイは左右に首を振った。 「ケイトが会いたい時に会う?」  ケイはもう一度首を横に振る。 「じゃ、おれが会いたい時に会う」  質問なのか、決定事項なのかが判別しづらい抑揚でアンリが言った。
/93ページ

最初のコメントを投稿しよう!

137人が本棚に入れています
本棚に追加