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「ケイトに会えなくなるのは、おれが、絶対に嫌だ」
だから、どうして、と、いう疑問をこめて、ケイはちょっと首を曲げて、視線だけをアンリに向けた。
「中学卒業したあと、ケイトと連絡取れなくなって、すごく後悔した。もう、ぜったい後悔したくない」
「なん、で、」
「おれの知らないところで、ケイトに、寂しくなったり、辛くなったり、して欲しくない」
アンリは迷いのなさそうな、真っ直ぐな声で告げた。
だけどケイはやっぱり納得できなかった。
アンリの知らないところでケイが寂しくて、それがいったい、アンリに何の不都合があるというのだろう。
答えられずにいたケイの名前を、アンリが呼んだ。
さっきよりも弱々しい声音だった。
「お願いだから……、『会いたくない』はもうやめて」
そこに、いつもケイに優しく笑いかけてくれる余裕のあるアンリはいなかった。
好きな人からの切なげな懇願を聞いて、さすがにもう、ケイは『会いたくない』とは言えなくなった。
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