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「……連絡、する、」
とうとう諦めて、ケイはぽつりと呟いた。
アンリはぱっと表情を明るくする。
「本当?」
「寂しい、とき、アンリに、言う、」
ケイの言葉に、アンリの目もとが柔らかく緩んだ。
いつもの、見慣れた優しいほほ笑みが向けられる。
「約束だよ、絶対、」
アンリは念を押すようにそう言って、ケイの体をぎゅっと抱きしめた。
隠していたはずの心はもう、元の場所に戻ってしまった。
アンリの体温に、その心はじんわりと溶かされてゆく。
ケイはアンリの胸に顔をうずめ、まぶたを閉じた。
鼓動の音が聞こえる。
不意に、好き、という言葉がこぼれ落ちそうになった。
しかし唇を噛み締めてそれを呑み込む。
胸が締め付けられて、ずきりと痛んだ。
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