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「うるせえ!」
トイレの中からボサボサ頭の老人が出てきた。
「とっとと帰れ!」
四人は全速力で車に戻り、すぐに出発した。
しばらく呆然として、誰も口を開かなかった。
峠を下り、下の方に街の灯りが見え始めると、少しは落ち着きを取り戻した。
「あのおじさん、酒臭かった」
「トイレの中に割れた一升瓶あったね」
「お酒終わって頭に来てビンを割ったのかなあ」
「ありえるー」
「ツマミの袋も散らかってた」
「あそこに住んでるのかな?」
「まさか……」
四人は一瞬黙ったかと思ったら、一斉に笑いだした。
「何だったんだー」
「マジ怖かったー」
「驚いたなー」
「マサユキ、工具持って来るとか言い出すし」
「だって、故障なら直してやろうかなって……」
「職業病?」
真夜中だというのに、四人は全く眠くは無かった。逆に元気一杯だった。
お盆休みが終れば、またそれぞれの居場所に帰って行く。今度はいつ会えるのか分からない。
でも、この先何年経っても、今晩の事は忘れないだろう。何年、いや、何十年後に会っても、今晩の事で笑い合えるだろう。
「あ、見て。月が綺麗」
この山は、恐い伝説もあるが、月の名所としても有名だ。
月明かりに照らされながら走る、四人の真夜中のドライブは、まだまだ終わりそうにない。
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