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その晩、ふと目が覚めた。 時計は一時を少し回ったところ。 午前二時は幽霊が怖いけど今はまだ大丈夫。 そんなことを思いながら喉の乾きを潤すためにリビングに降りる。 ドアを開けようとした時、ドアのすりガラス越しにテレビが着いているのがわかった。 また着けっぱなしにしてるんだな。 そのままドアを開けるとテレビにはホラー番組が映っていた。 よりによってこんなの… 怖いと思いながらもなんだか観てしまう性分を何とかしたいと思ったが、今更どうすることもできず、画面を見つめる。 そこには暗闇に包まれた深い森の中を歩く一人の男性が映し出されていた。 懐中電灯の明かりを頼りに歩を進めると開けた場所に出る。 先を見やるとトンネルがある。 男性がトンネルの正面にきた時、男性の両肩に手のようなものが映る。 撮影者は驚き、男性を呼び止めようとするが彼はそのまま進み続ける。 男性を必死に追った撮影者は、だがしかし、トンネルの入口付近で立ちすくんでしまい、そのままそこで彼を待っている。 画面は真っ暗なトンネルを映し、スピーカーはトンネルの向こうから聞こえる、男性のものと思しき高らかな笑い声を響かせている。 ただ、彼はなかなか戻らず笑い声もだんだんと遠ざかり、最後は聞こえなくなった。 撮影者は恐怖し、彼を置いて逃げ帰ってしまった。 撮影者は彼とはその後、音信不通になったと語っている。 ーしかしー ふと思った。 撮影者の声は加工されていたが、話し方からするに女性であった。 一方、暗い上に素人が撮影した映像はブレが酷くよく見えなかった。 だが、歩いていた人物を、わたしはすぐに男性だとわかった。 前を行く人物の歩く姿は夫のそれとよく似ていた。 世の中には自分と似ている人が二人はいるっていうし、と自分を励ます。 そういえば、お手洗いにたっているであろう夫はいつ戻るのだろうか。
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