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勉強とウーロン茶
1
「龍広くんの目って、よーく見ると緑色だね」
「緑?」
「今、見えたんだ。キラキラって! すっごくキレイなグリーン」
ふぅん、と、適当に返事をし、龍広はまたテキストに集中します。
今日中に今取り組んでいる章を終わらせる――そう決めていたものですから、おしゃべりなんてしているヒマはなかったのです。
「なんでかな? 日本人じゃないの? ハーフとか?」
それなのに、向かいの響がちょっかいを出してくるものですから、思わずペンが止まってしまいます。
「ハーフだったら英語の勉強なんてしないだろ」
龍広はペン先でテキストをつつきます。そこには英語の長文問題。
彼はそれに丸や線などを引きながら少しずつ読み解いている最中なのです。
「英語しゃべれないタイプのハーフなのかと思って」
「両親とも日本人だ」
「おじいちゃんとかは?」
「もう死んでるが、たぶん日本人」
「じゃあなんで緑色なの?」
「知るか……」
龍広は響とレストランに来てしまったことを早くも後悔していました。
昼食のハンバーグを食べ終え、ドリンクバーをお供に涼しく静かにお勉強――の、つもりだったのに。
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