14人が本棚に入れています
本棚に追加
「へえ、そうだったんだ。ねえ、どんな島だったんすか?」
二人の話に割り込むように一人の若者が問いを放てば、一人また一人と口を開き始め、途端に空気が騒がしくなる。
そんな空気が、大石は嫌いではなかった。
やはり、居心地がいいのだ。
自分の音楽を肴に、多くの人間が話に花を咲かせているこの状況は、アーティスト冥利に尽きるものであるだろう。
だからこそ、意識しなければ抜け出せない。
一度それを決意した心は、少しも揺らいではいなかった。
次々と繰り出される質問に適当に返し、大石が歩き出す。
背後には、沢山のファンがいる。
だが、目の前にあるのは暗闇ばかり。
それでも、踏み出す足取りは軽かった。
最初のコメントを投稿しよう!