帰郷

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  「へえ、そうだったんだ。ねえ、どんな島だったんすか?」 二人の話に割り込むように一人の若者が問いを放てば、一人また一人と口を開き始め、途端に空気が騒がしくなる。 そんな空気が、大石は嫌いではなかった。 やはり、居心地がいいのだ。 自分の音楽を肴に、多くの人間が話に花を咲かせているこの状況は、アーティスト冥利に尽きるものであるだろう。 だからこそ、意識しなければ抜け出せない。 一度それを決意した心は、少しも揺らいではいなかった。 次々と繰り出される質問に適当に返し、大石が歩き出す。 背後には、沢山のファンがいる。 だが、目の前にあるのは暗闇ばかり。 それでも、踏み出す足取りは軽かった。
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