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銃を放つような叫びに対して、返ってきたのは沈黙だった。
電灯の少ない暗い道に、自分以外の姿は見つからない。
気のせいだったのだろうか……。
そう考えると、急に今の自分が滑稽に思えてくる。
誰もいない空間に向けて放った怒号が虚しく反響し、彼を笑っているような気さえしてくる。
たまらず、自宅の方向へと向き直り、足を早める。
先ほどの足音は、きっと未だに心のどこかに残っていた不安がもたらした幻聴だったのであろう。
そう思いこみ、わざと意識を外へと向ける。
ざわめく心を、誰よりも自分自身が認めたくなかった。
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