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夜行列車で過ごす夜は、大石にとって懐かしいものだった。
前にこれに乗ったのは、夢と希望を携えて東京へと出る時だった。
その頃の自分に言わせれば、今の自分は負け犬なのだろう。
しかし、今の大石はそう思っていなかった。
挑戦し、やるだけのことをやり、結局元の鞘に収まった。
それは無駄なことではないと思っていたからである。
夜が更け、眠気が襲ってくる。
目が覚めれば、銀杏島へと渡るフェリー乗り場にたどり着いていることだろう。
イヤホンを付けラジオのスイッチを入れれば、欠かさず聴いていた音楽番組が流れてくる。
心地よい音楽に身を預けながら、東京での疲れを癒すかのように大石は深い眠りに就いた。
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