クラゲと母の男

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「海に行きたぁい」 宿題に追われる小学二年の息子が、ベランダ越しに有明海を眺めて言った。 「ダメよ、今日は何日だと思ってるの? 8月12日、海にはもうクラゲがいるんだから」 「くらげって、食べられる?」 「食べられない、毒あるもの」 「食用のクラゲもあるらしいぞ」 横から口を挟んできた夫を無視して、私は息子の工作を手伝う。 こうやって親が手を出すから、年々小学生の夏休みの工作や自由研究が高水準化して、子供だけでやり遂げる作品が減ってきちゃうのよね。 分かっていても、ついやってしまう。 「私の時は、誰も手伝ってくれなかったのになぁ」 首を振るキリンの貯金箱に、足の部分をくっつけながら、ある夏の出来事を思い出した。 「そう言えば、夏休みにクラゲ作ったな」
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