2541人が本棚に入れています
本棚に追加
/429ページ
――というのが、昨日の出来事だ。
そして、今日、優は担任の京橋伊吹に、進路指導室に呼び出されていた。
目の前に座る伊吹は腕を組み、なにやら深く考え込んでいる。
すっきりとした男前のこの担任が、優はちょっと苦手だった。
確かに格好いいとは思うのだが、その整いすぎた顔のせいか、似合いすぎる眼鏡のせいか。
なにやら情がなさそうに見えるからだ。
向かい合って座る二人の間にある机には、優が白紙で提出した進路希望調査票が置かれている。
反抗の意思があって、白紙で出したわけではない。
単に進路を思いつかなかったのだ。
だが、まあ、怒られても仕方のない所業だろう。
しかし、優を呼び出した伊吹は腕を組み、目を閉じたまま沈黙していて、一向に叱ってこない。
怒られるより居心地が悪いな、と優が思ったとき、ようやく、伊吹が口を開いた。
最初のコメントを投稿しよう!