大好物は……

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「それでどうしたんじゃ?新しいズックでも買うか?」 ばあちゃんは財布を出して1万円札を俺にくれようとする。 ちなみにばあちゃんは靴の事をズックと言う。この場合、部活で使うスパイクの事を言っている。 「違うよ、そんなに俺を甘やかそうとしなくていいから!……あのさ、部活の皆がはやくもバテ気味なんだよ。俺はばあちゃんのおしんことか漬け物で平気だけどさ。皆には暑さ対策とかにもいいって言ってるんだけど、そんなの年寄りが食うものだって言って食わなくて……。どうしたら食ってくれると思う?」 「うーむ、そうじゃなあ……」 ばあちゃんは考える素振りを見せながら、引き出しから俺の手のひらよりもでかいせんべいを出した。 「あれ、子供の頃やったのぉ……。あれがよさそうじゃ」 ばあちゃんはそう言いながら菓子受けにティッシュを敷く。 「なんかいい方法あんのか?」 「あるとも」 ばあちゃんは笑顔で頷き、袋からせんべいを取り出して叩き割り、菓子受けに入れた。 いやいやいや、ゴキブリ触った手で? 「ほれ、お前も食え」 ばあちゃんは菓子受けをずいっと俺の前に差し出す。 「いや、いい……」 「そうかい……」 ばあちゃんは残念そうにゴキブリを潰してた方の手で、せんべいをバリバリ食べた。 「確かぁ……正樹の通学路にいくつか畑があったのぉ」 「え?あぁ、あるけど……」 「白菜はあったかの?」 「あったあった!でっかいのが!」 俺は通学路にある白菜畑を思い出した。 大きな白菜がずらりと並んで、何故か上の方が紐で縛られていた。 「なら、丁度いい。正樹、ばあちゃんが子供の頃はの、白菜の紐を取って中に塩や酢を入れて縛り直したんじゃよ」 「えぇっ!?そんな事したら怒られるんじゃ……」 どうやらばあちゃんの破天荒は、子供の頃かららしい……。
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