第1章 プロローグ 綾の絶望

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第1章 プロローグ 綾の絶望

1993年7月 今年の夏は冷夏と言われている。 昨年のフィリピンの火山噴火の影響で梅雨は長いし、お米が取れなくてタイから美味しくないお米を輸入するらしい。 とはいえ私の様な高校生の日常に大きな変化はなくて、勉強に部活に忙しい毎日を送っていた。 ポケベルが鳴った。ボーイフレンドの健二からだ。 「49106( 至急TEL)」 うん? 部活前に話したよね。何だろう。 急いで公衆電話を捜すと、交差点の向こうに電話ボックスが見える。 財布からテレホンカードを取り出して、度数を確認。 よし、まだ百円以上は残っている。 青信号で交差点を渡って、電話ボックスのドアを開けて中に入った。 受話器を上げてテレホンカードを入れて発信音を確認した所で、後ろのドアが開く気配があった。 振り返りながら、「すいません、まだ・・」と言い掛けた所で、 口にハンカチみたいなものを押し付けられた。 甘い匂いがする。 「なにを・・」 私の記憶はそこで無くなった。
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