第3章 茨城空港、JEJ初飛行試験

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この結論はシンプルだったが実行には一悶着あった。 浩二と茂雄が搭乗することに大多数の部下が反対の意見を出したのだ。 ただこれは、会長の指示だと説明するだけで、皆は了承した。 また、既に終了していたウェイトアンドバランスの計算のやり直しや、重量バラスト(これは水の重さで設定する)調整等の追加の時間が必要で、九時四五分の初飛行の予定が三十分程遅れた。 幸い浩二も茂雄も近日中に試作機への搭乗を予定していた為、緊急時の対応や脱出パラシュートの使用方法等の訓練も受講済であったので、搭乗資格という面では大きな問題はなかった。 もし不測の事態が発生した時は搭乗ドアを爆薬で吹き飛ばし、パラシュートで脱出することになる。もちろん、万が一の事態への備えということだが・・。 浩二と茂雄が更衣室でオレンジ色のツナギに着替えて、準備が完了したのは八時半を廻った所だった。事業所から滑走路側へ出ると三十メートル先にJEJ初号機が駐機している。 機体は安曇重工のコーポレートカラーであるライムグリーンに塗られ、尾翼にはJEJの文字が誇らしげに描かれている。 その横にはサポート機である安曇航空機社用機のガルフストリームG550が駐機している。この中型ビジネスジェットは本日の初飛行に同行し、外部からの飛行状況のモニターや初飛行状況の撮影を行う随伴機だ。 浩二はこの真新しいJEJの機体を見上げながら、六ヶ月前のロールアウト式典での感動を思い出していた。今日は更なる感動が間近に控えていると共に、開発の大きなマイルストーンとなるのだ。
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