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ほどなく、マスターワーニング警報ランプが点灯し、警報音が鳴りだした。失速警報音とステックシェイカーが同時に始まる。
高度は1000フィートを超えたところ。機体ピッチは70度、速度は100ノットから更に減速している。
「ナンバーワンエンジン出力低下、コンプッサーストールです。ナンバーツーエンジンも減速しています」
神谷が叫ぶ。ほどなくエンジン騒音が無くなった。
長谷川がもう一度叫んだ。
「高橋さんと小山内さんは緊急脱出を!! 神谷君、アボードだ!ドア爆破を!!」
浩二は頷き、五点式のベルトを外そうとした。
神谷は長谷川の指示に従い、頭上パネルの赤いプラスチックカバーを開け、中のスイッチを捻った。後方で爆発音がし、ドアが火薬の力で吹き飛ばされる。
風音が高まった。
その時、JEJは1240フィートを頂点に機首下げに入った。
強烈なマイナス加速度が浩二を襲う。
(ベルトのロックが・・外せない)
「神谷君、エンジン再始動を!!」
「やってます!!」
コクピットの窓に地面の農地が広がる。エンジンの再始動は間に合いそうにない・・。
GPWS(地上接近警報装置)の警告音が聞こえる。
機首上げ”Pull UP!”の警報に続き、
降下率”Sink Rate!”の警報が鳴る。
そしてついに地面接近警報”Terrain Terrain”が鳴り始めた。
浩二が最後に覚えているのは、地面に映ったJEJの影だった。
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