第3章 茨城空港、JEJ初飛行試験

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ほどなく、マスターワーニング警報ランプが点灯し、警報音が鳴りだした。失速警報音とステックシェイカーが同時に始まる。 高度は1000フィートを超えたところ。機体ピッチは70度、速度は100ノットから更に減速している。 「ナンバーワンエンジン出力低下、コンプッサーストールです。ナンバーツーエンジンも減速しています」 神谷が叫ぶ。ほどなくエンジン騒音が無くなった。 長谷川がもう一度叫んだ。 「高橋さんと小山内さんは緊急脱出を!! 神谷君、アボードだ!ドア爆破を!!」 浩二は頷き、五点式のベルトを外そうとした。 神谷は長谷川の指示に従い、頭上パネルの赤いプラスチックカバーを開け、中のスイッチを捻った。後方で爆発音がし、ドアが火薬の力で吹き飛ばされる。 風音が高まった。 その時、JEJは1240フィートを頂点に機首下げに入った。 強烈なマイナス加速度が浩二を襲う。 (ベルトのロックが・・外せない) 「神谷君、エンジン再始動を!!」 「やってます!!」 コクピットの窓に地面の農地が広がる。エンジンの再始動は間に合いそうにない・・。 GPWS(地上接近警報装置)の警告音が聞こえる。 機首上げ”Pull UP!”の警報に続き、 降下率”Sink Rate!”の警報が鳴る。 そしてついに地面接近警報”Terrain Terrain”が鳴り始めた。 浩二が最後に覚えているのは、地面に映ったJEJの影だった。
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