第2章 真理、運命の歯車が回り出す時

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後ろから聴き慣れた声がする。 「真理! 待ってよ」 真理が振り返ると見慣れた顔が走って来ている。そう、噂の達也だ。 「おはよう、達也。早いのね」 達也はスラリとした長身。 多分、贔屓目(ひいきめ)だけどイケメンと言われるレベルの容姿だと真理は思っていた。 「知ってるか? ほら、前に真理に似ていると言った、安曇銀行の女性役員の」 「安曇京子さんね。私と全然似てないわよ。あんなに綺麗じゃないし・・」 「いや、確かに似てるって。だって真理を最初に見たとき、彼女の娘かと思ったんだ・・。 じゃなくて何と安曇銀行の頭取になったって新聞に載ってたぞ」 「えっ? そうなの。若いのに凄いな。私、あの人尊敬しているの。いつまでも綺麗で男性社会の銀行で役員やっていて。素敵よね」 二人は学校に到着した。 達也と真理は別のクラスなので、二人は教室の前で別れた。 真理の学校は進学校ということもあり、二十年以上前からエアコンが教室に取付けられている。 なので、外は灼熱地獄だけど快適な授業が受けられる。 真理の教室では、一時間目の英語が終って、二時間目の数学が始まっていた。 十分程経った所で、教室のドアが突然開き、教頭先生がドアから顔を出した。 「高橋真理君は居るか?」 唐突に自分の名前が呼ばれて、真理は固まってしまった。 クラスの全員が彼女を見ている。 「家族から連絡があったので、至急職員室に来てくれ」 「えっ? 今直ぐですか?」 「そうだ。そのまま帰宅する可能性もあるから荷物も持って来なさい」 真理は急いで荷物をまとめると、数学の先生に挨拶をして教室を出た。
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