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後ろから聴き慣れた声がする。
「真理! 待ってよ」
真理が振り返ると見慣れた顔が走って来ている。そう、噂の達也だ。
「おはよう、達也。早いのね」
達也はスラリとした長身。
多分、贔屓目だけどイケメンと言われるレベルの容姿だと真理は思っていた。
「知ってるか? ほら、前に真理に似ていると言った、安曇銀行の女性役員の」
「安曇京子さんね。私と全然似てないわよ。あんなに綺麗じゃないし・・」
「いや、確かに似てるって。だって真理を最初に見たとき、彼女の娘かと思ったんだ・・。 じゃなくて何と安曇銀行の頭取になったって新聞に載ってたぞ」
「えっ? そうなの。若いのに凄いな。私、あの人尊敬しているの。いつまでも綺麗で男性社会の銀行で役員やっていて。素敵よね」
二人は学校に到着した。
達也と真理は別のクラスなので、二人は教室の前で別れた。
真理の学校は進学校ということもあり、二十年以上前からエアコンが教室に取付けられている。
なので、外は灼熱地獄だけど快適な授業が受けられる。
真理の教室では、一時間目の英語が終って、二時間目の数学が始まっていた。
十分程経った所で、教室のドアが突然開き、教頭先生がドアから顔を出した。
「高橋真理君は居るか?」
唐突に自分の名前が呼ばれて、真理は固まってしまった。
クラスの全員が彼女を見ている。
「家族から連絡があったので、至急職員室に来てくれ」
「えっ? 今直ぐですか?」
「そうだ。そのまま帰宅する可能性もあるから荷物も持って来なさい」
真理は急いで荷物をまとめると、数学の先生に挨拶をして教室を出た。
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