第12章 綾の語る、安曇忠明の過去

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1985年 忠明は四十六歳。俊明と京子は十八歳になっていた。 この歳、俊明がバイク事故に遭った。 忠明の懸命の治療にも関わらず俊明は脳死状態となってしまった。 忠明は自分の半身に起きた不幸を悔やみながら、また科学者として別の欲求にかられていた。 (私は俊明の身体を活用できるのでは無いか・・・・) 忠明は、その強い欲求に襲われたが、残念ながら未だ技術は整っていない。 また、自分の移植手術を自分で執刀することはできないので、誰かにこの大手術を頼まなければいけない。 俊明の身体を忠明に移植する。 つまり忠明の頭を俊明の身体に取り付ける完全胴体移植術だ。 忠明は、俊明を植物状態のまま人工心肺装置で生かしておいて、その実行が可能となる日を待つ事にした。 ただ、この技術的な挑戦は思わぬ形で実現することとなる。
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