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1993年
京子に膵臓癌が発見された。他の臓器への転移もみられた。
まだ、回復の余地はあったが、多くの臓器を切り取ることで、今後の生活にも支障がでる見込みだった。
忠明の考えは明白だった。
「綾を使おう」
1976年に敦子のクローンとして生を受けた綾は十七歳になっていた。
俊明の身体の移植は実現していないが、京子に綾の体を移植するのは私の執刀でできる。
直ぐに手を回し、綾を拘束した。
京子は最後まで嫌がった。
「そんな他人に助けてもらうなら死んだ方がいいわ!」
でも忠明の考えは変わらなかった。全身麻酔で眠る直前に京子は言った。
「私の身代りになる人を殺さないで・・お願・・」
忠明は一瞬、躊躇したが二人の執刀に入った。
執刀から二週間が経ち、京子は立ち上がれるようになった。
京子の願いを受け、綾の頭部には血液を流し、生かしておいた。
しかし、意識を持たせる必要は無いと考え意識を消そうとした所、京子が
「私が会うまで意識を残しておいて」と言った。
京子を綾が保存されている部屋に連れて行った。ここには京子の古い身体も保存してある。
忠明は京子を残してその部屋を出た。中から京子の声が聞こえた。
「こういう時の為に、父はあなた達を造ったの。父は、あなたの意識を早く消しなさいと言ったけど、私はあなたにお礼が言いたくて今日まで・・・・」
しばらくして、京子が部屋から出て来た。
そして、忠明の胸で泣きじゃくった。
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