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「僕はどの様なプランで彼がこれを実行するのか判らなかった。達也君のケースは自分を殺さなければいけないからね。まさか飛行機を墜落させるとは思ってみなかったけど」
「僕は彼の言いなりになった振りをしていた。そして安曇忠明は、達也くんを嘘のクモ膜下出血で入院させ、自分の脳を達也くんの身体に移植する指示をしたんだ」
「でも僕がやったのは脳移植じゃない。記憶移植だ。達也くんの記憶を一時的に閉じ込めて、そこに安曇忠明の記憶を流し込んだ、だから実は・・」
「もしかして・・達也は眠っているだけ・・」
「その通り。達也くんは君の左側に寝ているよ」
振り向くと達也が居た。真理は少し目頭が熱くなるのを感じていた。
「今、達也君の記憶を復活する処理をしている。もうすぐ目覚めると思うけど、それは達也くんだ。そして安曇忠明の記憶は彼の元の身体に戻った」
「忠明も、もうすぐ目を覚ます。ただ既にこれまで集めた証拠と共に僕は自首するつもりだから、彼は直ぐに捕まる。そもそも死んだ人間が生きているのだし、言い訳は出来ないけどね」
「それと綾の記憶は、京子さんの脳に移させてもらった。京子さんの記憶は彼女の意志で少しずつ消えて行くことになる。今、話しているのは京子さんかな」
京子が微笑む。
「真理さん、さっきから話しているのは綾です。今、京子は眠っている。京子は、私に本来の身体を返してくれようとしているの」
真理は頷いた。
「それが、“おばさま”らしいわ」
「私達はそれぞれの半身だから、きっと仲良くなれるわね。あたなの今後の活躍にも期待しているわ」
綾が言った。真理も大きく頷いて、綾を抱きしめた。
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