第4章 もう一つの悲劇、そして安曇家へ

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第4章 もう一つの悲劇、そして安曇家へ

真理と達也が乗った安曇重工の社用車が事業所に到着すると、見慣れた顔が出迎えてくれた。 真理の父、浩二の秘書、高山深雪さんだ。彼女も目を腫らした様に見える。 同じく、達也を安曇航空機社長秘書らしき男性が迎える。 四人は三階の役員会議室に入った。 真理は車の中で泣き疲れていて、頭がボーッとしていたので何も考えられないでいた。 深雪さんがコーヒーを持って来てくれる。 それを無視して達也が秘書の男性に詰め寄る。 「尾崎さん、父の事故ってどういうことですか?」 尾崎という秘書は困った顔をして、横に居る深雪を見た。 「達也君、もうすぐ会長がいらっしゃって直接説明すると聞いているの。だから、もう少し待ってくれる?」と深雪が答えた。 「会長が・・」と達也が話した所で会議室のドアが開き、背の高い老人が入ってきた。 丁度、達也と同じ185センチくらいはありそうだ。 真理はその顔を知っていた。初めてお会いするが、テレビ等で何度も見た安曇会長だ。 その後ろにもう一人。 「安曇京子さん・・」真理が呟いた。 帝国銀行頭取、とても五十近くとは思えない美貌。そして安曇会長の長女・・ 真理は、普通だったら尊敬する京子さんに会えて天にも昇る気分の筈だが、今は、そんな気分では無かった・・ 会長がゆっくり話始める。 「君達も既に知っていると思うが、我が社の試作機が初飛行で墜落した。また、高橋君と小山内君は、そのフライトに同乗していた。現在、墜落現場の確認中だが、乗っていた7名全員は死亡した様だ。会社のトップとして責任を痛感している。特に君達は大事なお父上を亡くしてしまった。この償いは私の責任だ」
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