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6 出会いと始まり
チェリィは朝からもやもやとした気持ちでした。
昨日は素敵なひと時を過ごせたというのに、その夜に見た母の涙が気になって仕方がありません。
母エイミーは夜空の星を眺めながら一人で泣いていたのです。
大好きなお母さんの悲しんでいる姿にチェリィはとても衝撃を受けました。
「あらあら、チェリィったらどうしたの?」
珍しく難しい顔をしているチェリィに、母はいつものように明るく笑い掛けました。
まるであの出来事が嘘だったかのように母の笑顔は優しくて、昨夜見せた悲しげな面影はどこにも感じられません。
事情を追及してしまったらこの笑顔を曇らせてしまうような気がして、チェリィはなにも言えずにいました。
「お母さんは王様と大事なお話があるの。忙しくなりそうだから今日はマグにお世話してもらいなさい」
「え、でも」
「返事は?」
「はぁい」
せっかくここまで来たのだから一緒に出かけたいと思っていたのに、それができなくなってしまいました。
けれどお母さんには王様との大事な約束があるので、ワガママを言うわけにもいきません。
今日の所はおとなしく言う通りにしようと決めました。
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