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チェリィの家のすぐ隣には一軒の雑貨屋さんがありました。
棚や壁に小さなお花が飾られている可愛らしいお店で、カウンターの向こうには退屈そうにあくびをしているおじさんがいます。
「うーん小春日和。お客さんも来ないし昼寝でも」
登場早々、おじさんはぽかぽか陽気によってもたらされる睡魔に負け、夢の世界へダイブする五秒前でした。
「ごめんください」
「ハイいらっしゃいませ!」
夢の世界へダイブした瞬間におじさんは現実世界へ連れ戻されました。
心の中では「ぬおぉぉぉ危なかった!」とかいう類の叫びを上げていたとかいないとか。
突然のお客さんに慌てるおじさんでしたが、中に入ってきたチェリィ達一家を見てハッとしました。
正確に言うとおじさんはチェリィの母エイミーの姿にハッとしました。母はとびきりの美人さんなのです。
「初めまして。隣に越してきたエイミーという者です」
「おお、初めまして。ようこそみらくる村へ」
おじさんは立ち上がって頭を下げました。
小柄で優しそうなおじさんですが鼻の下を伸ばしてデレデレしております。
哀れな雑貨屋さんのハートを一瞬で射抜いてしまうとは、母はなんて罪な存在なのでしょう。
「こんにちは。あたしはチェリィです。よろしくお願いします」
村長さんにした時のようにチェリィはませガキポーズで可愛らしくお辞儀をしました。
「よろしくねチェリィちゃん」
おじさんはにっこりとした笑顔で返すと、お店の奥に声を掛けました。
「おぅいジミー、ちょっと出ておいで!」
ほどなくして奥の方からチェリィと同い年くらいの青い髪をした男の子が出てきました。
おっとりとした雰囲気のその少年は、チェリィ達親子の姿に丸い目をきょとんと瞬かせます。
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