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不思議に思って近寄ってみると、そこには地面に座り込んでまるくなっているいくつかの人影がありました。
いえ、これは人なのでしょうか?
「人形?」
彼らは洋服を着ていましたが、それは人間と同じくらいの大きさをした木の人形のように見えました。
頭部に髪はなく、目鼻口の輪郭はあるのですが顔は描かれておりません。
それぞれちょっとずつファッションが違い、おしゃれにシルクハットをかぶっている者までいます。
合計すると三体の木の人形がゴミ箱の陰に隠れて不良座りをしておりました。
「ケケケケケッ」
「ケケーッケッケケ」
「ケッケッケッ」
なんだか聞き覚えのある笑い声です。
見た感じ人形達はまるくなってお喋りに花を咲かせているようですが、なにを言っているのかはわかりません。
人形同士で会話は通じているらしく彼らはかなり盛り上がっており、どうやらこちらには気付いていない様子。
これは一体なんなのか。
近所の服屋からマネキンが逃げ出してきたのでしょうか。
そんな馬鹿なことがあるものかと思いつつ、世の中には自分の知らない不思議な出来事があるものだと少年は適当に納得します。
迷いつつ、少年は彼らに声を掛けてみました。
「なぁ」
「ケケーッ!」
たった一言呼び掛けただけで人形達は揃って甲高い声を上げました。
相手のビックリした声で少年も驚いてしまいます。今更ですが相手が「ケー」しか言えないらしいことにも地味に驚いておりました。
「ケケッケケッ!」
「ケーッケケケッ!」
慌てふためいた様子の彼らですがなにを言っているのかは不明。
少年が困惑している隙に人形達はダッシュでその場から逃げ出しました。
「!」
彼らの動きに、少年はまさかと思いました。
昨日の引ったくり、姿はよく見えませんでしたが背格好も独特な笑いもアクロバティックな動き方も、あの人形とそっくりだったのです。
「待て、待ちたまえ待ちやがれ! 逃げるなぁ!」
でかい声でわめきながら少年は人形達を追い掛けていきました。
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