27人が本棚に入れています
本棚に追加
/162ページ
「チェリィちゃんよろしくね。退屈しないようにおばさんがお城を案内してあげるわ」
とっても朗らかなこの人がお母さんの言っていたマグという女性です。
マグはふくよかな体型をした優しそうなおばさんで、昔ここに勤めていたお母さんのお世話係をしていたそうです。
「あのねマグさん、昨日お母さんがなんだか悲しそうにしていたの」
マグと一緒にお城の中庭にあるベンチに腰掛けながらチェリィはしょんぼりと言いました。
暖かい日差しに照らされる木々や、気持ちの良い風に舞う花弁に見向きもすることなく地面とにらめっこします。
マグはなにか思い当たることがあるらしく、いたわるように言いました。
「エイミー様はね、ここでご主人と住み込みで働いていたのよ」
「それって、あたしのお父さんと?」
「ええ。きっとエイミー様はその頃のことを思い出していらしたんじゃないかしら? とても仲の良いご夫婦だったのだけれど、あんなことがあったからねぇ」
「あんなことって?」
純朴な眼差しでチェリィは尋ねました。
「ああ、あの。ちょっとね」
どこか困ったように言葉を濁されて、チェリィは不安になりました。
「あたし聞いちゃいけないこと聞いちゃったの?」
「いいのよチェリィちゃん。ただチェリィちゃんには、ちょっとつらいことかも知れないから」
「どういう意味?」
「チェリィちゃんは、エイミー様からお父さんの話を聞いたことはある?」
「全然」
「それじゃあ、おばさんの口から言うわけにはいかないわね」
「えー? もったいぶらずに教えてよ」
なかなか答えてくれないマグにチェリィはちょっぴり不満です。
「じゃあねぇ、昔この国が襲われたという話は知っている?」
「もちろんよ! お母さんがみんなを助けたんでしょ」
そう、それはまだチェリィが生まれる前のこと。
エイミーが光の魔法で魔物達からこの国を救ったというお話です。
最初のコメントを投稿しよう!