第3章

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 私は兄のコップを奪い取った。見せつけるため、残っていた炭酸飲料を舌を突き出して煽るように全て飲み干す。糸引くような視線で、聡の視線を絡め取る。覚えたての男を誘惑する態度を見せて、彼に背中を向けてスカートを捲りあげた。女になった私が履く下着は、勝負下着。聡の視線がお尻に注がれるのを感じて、ゾクゾクした。 「……何、してんの?」 「仲直りしたいの。聡と……」  私はそのまま聡の部屋に向かった。聡はブリキの兵隊さんのように、私を追いかけてくる。押し入れから昔お母さんが私を縛っていた赤い紐を持ち出して、聡のベッドの頭の上に設置されていたバスケットゴールに引っ掛けた。短いスカートを履いたまま、高い場所に立ちショーツを膝のまで引き下ろすと、中身が丸見えになる。聡はゴクリと喉を鳴らした。 「ねぇ、私と勝負しない? 我慢比べしよ?」 「…我慢……比べ?」  用意しておいたテープで口を塞ぎ、自ら赤い紐の輪っかに両手を差し込んで締めた。聡が困惑しながらも私に近付いてきて、私越しのカーテンに手を伸ばし、ピシャっと勢いよくそれを閉めた。近付いた顔と顔、よく似た兄と妹。聡の瞳に映る私が、私を見てる。
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