第4章

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 洗っても洗っても取れない、ぬめった舌の感触に身体はまだ支配されている。目を開けても閉じても強烈な体験が蘇り、私をオカシクさせる。そんな自分を抑えつけるように両肩を抱きしめて、風呂場の床にしゃがみこんでわんわんと泣いた。そこにお母さんが帰ってきて、勢いよく風呂場のドアを開けた。咄嗟に縛られた跡を見せ、汚れた体を見せつけ、聡の名前をつぶやいた。  青ざめたお母さんの顔を見たら、堪らない気持ちになった。可愛そうな私を抱きしめた温もりは、一瞬だけだった。でも、思った以上に両親は過敏に反応して二人して聡のところに行った。事件を起こした張本人はまだ裸で寝ていた。お父さんが揺すり起こす。問い詰めたら、あっさり認めてもう一度寝転がった。  それからすぐに病院に連れて行かれた。初めての産婦人科で、奥まで調べられて、アフターピルという薬を飲んだ。でも通報は要らない、とお金を払ってすぐに帰宅した。 「何言ったって俺達のこと、どうせわかりっこないでしょ?」  聡は冷めていた。それまでとは全く別の、冷酷な仮面をつけて両親を困惑させた。一晩経ったら、お母さんが私にこう言った。 「千砂。お祖母ちゃんのところで暮らしなさい。学校も通いやすくなるんだし」
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