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まさか、こんなことになるなんて、冗談じゃない!
どうして?
お母さんにとって、同じ女の私のことよりも聡の方が大事だと言うの?
私は、どうしたってあいつには敵わないの?
お母さんはやっぱり、私のことなんてどうだって良いんだ…。
惨めに泣いていたら、お祖母ちゃんの家の二階の窓を、コツンコツンと小石が叩いた。古ぼけた窓を開けると、自転車に乗った聡がこちらを見上げていた。優しく微笑むその顔を見た瞬間、私の絶望に光が射した。
大嫌いだった兄を、私が男に変えてしまった。男になった兄はもう兄じゃない。私は女で、彼は男。聡に求められるがまま抱かれると、愛されているのだと実感する。
こんな筈じゃなかった。こうなるなんて予想できなかった。憎しみが愛に覆われて、澄んだ空が視えるけれど、きっとこれは皆が見ている空じゃない。私達だけの、大空――。
いけないことだと知っているのに、理性が効かない。
赤く引かれていた境界線がもう、見えない。
今夜もまた、嵐がくる。
終わり
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