第4章

3/3
382人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
 まさか、こんなことになるなんて、冗談じゃない!  どうして?   お母さんにとって、同じ女の私のことよりも聡の方が大事だと言うの?  私は、どうしたってあいつには敵わないの?  お母さんはやっぱり、私のことなんてどうだって良いんだ…。  惨めに泣いていたら、お祖母ちゃんの家の二階の窓を、コツンコツンと小石が叩いた。古ぼけた窓を開けると、自転車に乗った聡がこちらを見上げていた。優しく微笑むその顔を見た瞬間、私の絶望に光が射した。  大嫌いだった兄を、私が男に変えてしまった。男になった兄はもう兄じゃない。私は女で、彼は男。聡に求められるがまま抱かれると、愛されているのだと実感する。  こんな筈じゃなかった。こうなるなんて予想できなかった。憎しみが愛に覆われて、澄んだ空が視えるけれど、きっとこれは皆が見ている空じゃない。私達だけの、大空――。  いけないことだと知っているのに、理性(ブレーキ)が効かない。  赤く引かれていた境界線がもう、見えない。  今夜もまた、嵐がくる。  終わり
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!