真夜中

2/3
前へ
/3ページ
次へ
 後は蛍に導かれて小高い丘を目指す。 ふと、私の右手に一匹の蛍が止まる。 それは小さな宝石に見えた。  それから丘に頂上に着いたけど疲労感は感じてない。 この時にやっと夜目が慣れたのだろうと、空を見上げる。  すると、そこには満遍なく輝く星々があった。 私は丘の上に寝転がり、安心感に浸りながら星空を見ていたら、その奥にある星の川が見えた。  これを人は天の川というらしいが私は違うと確信を持っていた。 ちゃんとした名前があるのにそれが言えない…………まるでそれを言ったら自分が消えるような思いになった。 だから、私は思わず蛍が乗っている右手を伸ばした。  それでも蛍は離れない…それでも構わず空に浮かぶ星を掴もうとした。 「もう少しで……」 なんて呟いても星は手に入ることはできない。  でも、それを見かねたのか周りの蛍達が一斉に私の周りに寄ってきた。 「心配、かけちゃったね」と詫びを入れてから右手を下ろした。 その瞬間、自分の手に止まっていた蛍が離れた。  真夜中は不思議なものだ。  だって、人はこの時間を嫌うからだ… やれ、神隠しだとか妖怪に食われるだとか そして、蛍もその一部じゃないかって疑う人がいる。 それはなんでっかって?         人魂………だって…  私はそんな風に思わない。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加