仔猫と野ねずみ

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   ぼくの飼い主さんはいつも同じ時間にいなくなる。もちろん仕事だということはぼくは解ってる。だから、帰ってくるまで一人でお留守番をしている。  いや、最近は一人じゃなかった。ぼくのえさ箱に頭から突っ込んでる毛玉がいる。 「じーちゃんてどこに住んでるの?」 「わしは孤高のハムスターじゃ」 「飼い主さんは男の人?」 「孤高のハムスターじゃと言うておろうが。人に飼われるなどといった愚劣(ぐれつ)きわまる存在ではない」  とか言いながら、飼い主さんが置いてったぼくのえさを食べている。じーちゃんがどこから来たのかはわからない。  ある日ふと、気がついたらぼくのえさ箱に頭を突っ込んでぼくのえさを食べていた。  ねずみなんて初めて見るから、ぼくは怖くなって物陰に隠れたけど、そのねずみはぼくをちらりと見て、またえさを食べ出した。  怖かったけどぼくは意を決してそいつに近づいた。でも、ぼくが知ってるねずみとはちょっと違ってた。  少し濃い灰色だけど長い尻尾もくびれもなくて、背中に一本、黒い線が入ってる。
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