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「えっ? そちらのハムスターがうちに?」
「はい」
いまハムスターって言った、じーちゃんのことかな。ぼくがドアの影から覗いてたら、飼い主さんがその人を家に上げた。
「いつもあいつがキャットフードとか持っていたんで気になっていたんです」
「それでペットショップを片っ端から? 凄いですね」
「脱走していたのはその家に行くためなんじゃないかと思って」
男の人は少し哀しそうに笑ってコーヒーを飲んだ。
「きっと、その猫ちゃんに会いに脱走していたんでしょうね」
ぼくを見て言った。飼い主さんはぼくを抱きかかえて、いつもしてるように頭を撫でてくれたけど、ぼくの気のせいかな。手がちょっとだけ震えてるみたいだ。
「猫にも好みがありますから、ペットショップの人に聞けば解るかもと、あいつが持ち帰っていたエサを見せて回りました」
「この子、二ヶ月くらい前にえらく走り回っていたことがあるんです。一週間くらいそわそわして」
「あ、脱走防止にケージに洗濯ばさみを挟んだときだ」
なに? 二人でぼくをじっと見て。
「あいつ、もうよろよろで……。最期を看取ることが出来て良かったです。ハムスターにしては長生きな方だったんですよ」
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