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「そうだわ!これよ!クックックッ」
また何か思いついたのか。
先生が不敵な笑みを浮かべてから僅か二日後に、各紙新聞一面をある法案可決の見出しが賑わせた。
『SM法案可決!!』
なんだこれ?
いったいどういった法なのか……。
法案を通した俺の先生に聞けば分かることだった。
言い忘れたが、俺の先生は議員先生だ。
「はは、馬鹿ね。よく内容を読みなさい。SM法案、正式名称『Sexual Mainority法案』ね!これだけ言えば分かるでしょ?」
つまり先生は、先日の電車での痴漢行為(もみ消し済み)をキッカケに女性専用車両のみならず、sexual minority専用車両の設置を望んだ。
その為に『Sexual Minority法案』をつくり、性的少数者の人権保護を謳い、例の車両設置の義務化を促そうというのだ。
見事狙いは的中。
かくして『sexual minority専用車両』が世に登場した。
そしてその日はやって来た。
俺たち人間が如何に稚拙で、固定観念に囚われているか、まざまざと思い知らされたあの日が。
「先生は世の中を動かすなら歴史を学べと言いますが、この発展した現代社会においてこういったものは一体なんの意味をなすのですか?」
俺は、テーブルに置かれた新聞を手に取り、うちわのように扇ぎながら先生に尋ねた。
「今の時代、こんな先史時代の遺産は甚だ滑稽にしか見えません。見出しもセンスが感じられない。それに科学技術もかなり進歩しているはずなのに、妙に古臭い……と言いますか……」
俺は続けた。
「細かい事を言いますが、先生。あの女性専用車両についてですが、なぜ今頃なのですか?今の時代、ああいったことは逆に誤解を生みます」
この後の先生の話を聞いて、俺はこんな質問するんじゃなかったと後悔した。
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