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言われるがまま土方のそばに行くと、遠目では見えにくかった上司の表情がしっかり見える距離まで近づくと、思いのほか真剣な顔をしていることに僅かに驚いた。
「村木、お前は三番組についてもらう。」
「三番組・・・というと、斎藤組長の。」
「そうだ。
お前はたしかに体力はあるが技術面に関しては
足りない部分が多すぎる。
それに剣術も実践向きではあるが、まだまだたりない部分もある。
斎藤であればお前自身に足りないものを稽古で
補わせるだろうから、そっちにいけ。いいな。」
「え?一くんの方に行くんですか?
村木君の実力なら一番組に来れると思いますけど」
ごねるように、若干おちゃらけたように村木が
三番組に行くことに対して抗議を言う沖田ではあったが、土方がギロリと睨みつけると
肩を少し竦めてその先は何も言わなかった。
その様子を見ながら村木は自分の頭の中の情報を整理する。
三番組組長 斎藤一
年齢は藤堂と同い年で、最年少幹部。
今の時代には珍しい右に刀をつける左利きだ
実力は、沖田に引けるにも劣らずと言ったところか
居合を得意とする
性格は冷静沈着といった感じで、いつも明るい性格の藤堂や、どこか食えない沖田とはまだ別種類の人間だというのが村木の知っている限りの情報だ。
もうひとつ、付け加えるとするのならば
土方に忠実だということ。
そんな、斎藤一の三番組に入れる。
となると・・・
何かの意図を感じずにはいられないが
副長の立場である土方と、ただの平隊士である村木との立場というものはかなりの差がある。
拒否する権利もない。
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