【3】三番組組長

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月明かりだけが頼りの稽古場には、村木と斎藤。 この2人だけしかいない。 もちろん、昼間の試合をした時の見物客はいない。 既にお互いの手の中には獲物を携え、斎藤は己の得意分野である居合の構えを。 村木は昼間の時と違い右手ではなく獲物を左手へ持ち替えて、上段の霞の構えをとる。 この霞の構え(かすみのかまえ)とは自分の口あたりで 獲物を水平にして持った構え。であり確実に相手の眼をねらう。 人を殺すための構え。 佐々木の時と違い村木は、斎藤に対して遠慮という言葉を作らない。 この試合に関して、合図を出す存在など無用 それぞれの呼吸を合わせ それぞれの時機を見て足を踏み込む。 「ふっ!」 最初に踏み込んだのは村木。 このまま無防備に突っ込んでしまえば、斎藤の居合の餌食になるのが常だ。 村木は居合だけで終わるつもりはなく 一閃 見えないほどの鋭い斬撃が襲ってくるが紙一重、 木刀の風圧で何本か己の髪を持っていかれながらも 肌にはカスリもせずに避ける。
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