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「・・・・・・。」
団子をもぐもぐと食べていると、隣の若者からじーっと見つめられて知るのがわかる。
それは、村木自身を見ているのではなく
村木の腰についている刀の¨位置¨であった。
「そんなに珍しいか?俺の刀の位置が。」
「え。・・・・・・まぁ」
そう
村木もまた、若者と同じ右差しだ。
といっても正直、村木の右差しは気分で左差しにも変化する。
規則性がないのだ。
その日の気分によって、右か、あるいは左か。
様々に変わる。
今日はたまたま右差しの気分だったのだが、若者は
村木が右差し出なかったら目線を寄越すこともなかっただろう。
「君も随分と珍しい刀の差し方をしている。
ご両親や、道場の師範に直されたりしなかったのか?」
「最初は直そうと努力はした。
・・・努力はしたが、左差しに直すと威力が格段に落ちてしまった。」
当たり障りのない会話をする。
相手の名を知らず、善人なのか、悪人であるのか。
強者か、弱者か。
そんなことも知らず。
ただ、お互いの刀のみ話す
なんとも不可思議な世界
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