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どれほどの時間をリンカが走り続けたのか分からない。
いっそう分厚い雲が夜空を覆う頃、リンカは集落の木製の門に着くや否や、頭から地面に倒れ込んだ。急に止まった勢いで、僕はリンカの前まで飛ばされてしまった。
リンカは苦しそうに、必死に息を吸おうとしている。でも、しっかり吐けないから、呼吸はどんどん速くなる。咳をする。涙を流す。声は出そうとしているけど出ない。
苦痛に全身を震わせる彼を、恐ろしく冷静に見つめる自分を、どこかから見つめている。
リンカの背中をさするようなことをしようとは露ほども思わない。
ただ、彼が苦しんでいる事実を自分の脳に刻むだけ。
ため息をつく。
やっぱり涙が湧いてこないことに落胆する。
むしろ、感情はどんどん冷めていく。
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