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「こんな夕暮れ時に誰だい!?」
リンカの咳に気づいた集落の誰かが、きしむ門の片方を開いて現れた。暗い空の下でも、中年のおばさんの髪ははっきりと赤い。
「リンカ!リンカじゃないか!!」
地面にうずくまるリンカに大股で駆け寄り、赤髪のおばさんは彼の身体を抱き起こした。その太い腕に包まれて、リンカは何度も浅い呼吸をする。
おばさんが門に向かって叫ぶ。
やがて大柄な男から小さな子供まで、わらわらと人が集まってきた。リンカの姿を見るなり背中をさする者や、水を取りに戻る者、みんな赤髪だ。
やがてリンカの呼吸が落ち着いた頃、20歳くらいの若い男が僕をいとも簡単につまみあげた。僕は、僕の表情がまったく動かないことを感じる。
「このちっこいのは誰だ?」
「・・・そいつは・・・・・・俺のッげほ・・・友達っす・・・・・・げほげほッ!」
「分かった分かった、無理して喋んな!とりあえず、知ってるやつなんだな。」
青年の確認に、リンカはわずかに頭を下げる。視線は決して地面から離さない。
「それで、リンコウは?」
おばさんの質問に、リンカの肩がびくりと震えた。
「・・・死にました。」
誰の声?
リンカの声じゃなかった。
たくさんの人の視線が集中する。
__僕に。
「リンコウは、死にました。」
それは、感情のカケラもない僕の言葉だった。
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