第5話  『雨』

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「こんな夕暮れ時に誰だい!?」    リンカの咳に気づいた集落の誰かが、きしむ門の片方を開いて現れた。暗い空の下でも、中年のおばさんの髪ははっきりと赤い。 「リンカ!リンカじゃないか!!」  地面にうずくまるリンカに大股で駆け寄り、赤髪のおばさんは彼の身体を抱き起こした。その太い腕に包まれて、リンカは何度も浅い呼吸をする。  おばさんが門に向かって叫ぶ。  やがて大柄な男から小さな子供まで、わらわらと人が集まってきた。リンカの姿を見るなり背中をさする者や、水を取りに戻る者、みんな赤髪だ。  やがてリンカの呼吸が落ち着いた頃、20歳くらいの若い男が僕をいとも簡単につまみあげた。僕は、僕の表情がまったく動かないことを感じる。 「このちっこいのは誰だ?」 「・・・そいつは・・・・・・俺のッげほ・・・友達っす・・・・・・げほげほッ!」 「分かった分かった、無理して喋んな!とりあえず、知ってるやつなんだな。」  青年の確認に、リンカはわずかに頭を下げる。視線は決して地面から離さない。 「それで、リンコウは?」  おばさんの質問に、リンカの肩がびくりと震えた。 「・・・死にました。」  誰の声?  リンカの声じゃなかった。  たくさんの人の視線が集中する。      __僕に。 「リンコウは、死にました。」  それは、感情のカケラもない僕の言葉だった。
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