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「家の繋がりとか、色々事情があってのことなのはわかっているんだけど、どうしても・・・」
「そりゃ、あんな台詞吐かれている最中に遭遇したら、誰でもびっくりするよな」
額に音を立ててキスをすると、おずおずと顔を上げてきた。
「・・・びっくりして・・・」
「うん」
「少ししたら、ものすごく、腹が立って・・・」
「うん」
「なんで、なんで、そんなに簡単に触らせるのかって・・・」
「そうだよな、ごめん」
すんなりとした鼻筋に唇をゆっくり這わせると、ぷるりと睫が震えた。
「もう、あんなことはないから」
「・・・」
「ハル。本当にない。あいつも食指がわかないって言っただろ」
「それでも・・・」
不安になる。
あの、薄闇の帳の向こうにあった二つの影が頭から離れない。
つきんと感じた胸の痛みをそのままに、春彦は握り締めた男のシャツに伝える。
「ハル」
屈んできた片桐と鼻と鼻を軽く擦り合わせた後、唇をちゅっと吸われた。
「好きだ」
また、唇を吸われる。
「お前だけ、好きだ」
瞼を閉じて、唇を、舌を、吐息を感じる。
「誰よりも、言葉に出来ないくらい、すきだ」
両腕を伸ばして首に縋った。
合わさった胸が、暖かい。
抱きしめられて、夢見心地になる。
「・・・月に・・・」
「うん?」
「月まで行って、帰ってくるくらい?」
ふっと、合わせていた唇がほころんだのを感じた。
「覚えてたのか・・・」
どんなに、
どんなに。
きみが好きだと・・・。
「そうだな・・・」
深く、唇を求められて、求め返す。
「でも俺は・・・」
甘い、かすかな囁き。
互いの身体の熱が、上がっていく。
「お前を、優しく寝かしつけるだけだなんて、まず無理だ」
唇で、心を分かち合う。
「お前が、欲しいよ」
どんなに、
どれだけ、
君を好きだろう。
指先で、唇で、語る。
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